2021年7月中旬。
私たちは「自分達の生き方・生きる場所」を探しに、東京から自転車旅を始めました。
旅の最初の目的地は茨城県石岡市の八郷盆地
北海道行きのフェリーに乗る前に、以前からどうしてもお会いしたかった方達のところへ。
それが、ベジタリアンフレンドリーきまたさん
以前からお野菜の配達をお願いしており、ビデオでも紹介をしています。👇
私たちが木全さんのお野菜便をお願いしていたのには理由が。
「完全露地栽培」
温室や温床などの特別な設備を使わず、露天の耕地で作物を栽培する農法。
こちらのファームは作物の栽培に、ビニールハウスやビニールマルチなどの使い捨て素材を使用しないのです。
もちろん無農薬。
堆肥はご自分達で集めた落ち葉を積んでおいただけのもの、肥料は腐葉土と米ぬかを発酵させた物を使用し、鶏糞などの動物性肥料は使用していません。
そして、自宅に届くお野菜便にもビニール包装はなし。
常々、生産の段階からプラスチックを始めとした使い捨ての物を使用していない農家さんから、無農薬・動物性肥料を使用していない安心して食べられる野菜を購入したいと思っていたので、木全さんのお野菜便は私たちにピッタリでした。
今回、そんなファームを実際に訪れ畑を見せていただき、あきらさん、ふみさんにお話を伺いました。
また、お二人とも茨城県への移住者。
自分の理想とする場所への移住に大切なアドバイスもいただきました。
都会の暮らしと田舎の暮らし
「学校を出て、就職して月曜日から金曜日まで働いて、残業したら残業代をもらってっていう都会の生活しか知らなかった。田舎に来て初めて、『そうじゃなくても生きられる』ということを知った」
と語るあきらさん。
「この『生活の違い』があることを若い時から知っているといいよね」
私も都会生まれ、都会育ちで『都会で暮らす自分』にしっくりいっていなかった1人。自然とともに暮らす生活をニュージーランドで体験してから『本当の自分』を発見できたので、ぜひ、この『都会と田舎の暮らしの違い』は知っていてほしいと思った。
あきらさんは元々設計会社に勤めていたとのこと。
移住への転機
「『風景を作る仕事』をしたくて設計会社に就職し、公園などのデザインをしていたけれど、自分が作りたい風景を作るのに“開発”として自然破壊に加担しているという事実に直面した。環境問題も知り始めた時期と重なり、自分が何をしたらいいのか分からなくなってしまった。だからインドに行ってみたんだ。でも菜食主義が身体に良いことは分かったけれど、結局何をしたらいいのかわからないままだった。帰国後にはまた同じ設計会社に再就職したよ」
数年働くも、迷いが捨てきれず今度は南米へ。帰国後に自然食品店に就職。しかし、毎日の激務に追われ結局やりたいこととは遠く離れた生活をしていた。
「毎日夜遅く帰ってきてオーガニックだけど、インスタントラーメンだけ食べるみたいな生活だったよ」
と当時を語るあきらさん。
一念発起し、1人で田舎に移住を決断!自給自足の生活を目指して、畑で野菜を作り始めるも上手くいかず…
自然食品店で働いていた時に知った千葉県の小泉循環農場に農業研修生として就職。そこで現在の完全露地栽培の基礎となる里山有機農法を学んだとのこと。
「小泉さんが『農業は景色を作る仕事なんですよ』って言ったのに感動しちゃってね。やりたかった『風景を作る仕事』もできるのか!ってね」
と興奮気味に語るあきらさん。
一方のふみさんは大学生の頃、南北問題に関するゼミの中で大学の裏の市民公園でお米を作った経験から『作る喜び』を初めて知ったとのこと。
「当時の日本では「エビと日本人」や「バナナと日本人」という本が話題になっていた。自分が何かを食べることで、知らず知らずに誰かや環境を傷つけていることを知って。それなら、できるだけ自給自足をしたいと思うようになった」
そんな大学在学中にお茶の水にある自然食品店GAIAでアルバイトをし始める。大学卒業後にOLとして会社に就職したが、
「ビルの9階で窓を開けちゃダメと言われて…息が詰まりそうな1年間を過ごしていた」
そこで退職し、再度GAIAに就職を果たす。
小泉循環農場の小泉さんはGAIAに野菜を卸していたこともあり、小泉さんのご紹介で畑を借り「GAIA畑」を開始。
最初はGAIAの店員全員で始めたが、お茶の水と成田という距離から徐々にふみさんが1人で管理を任されるようになっていき、GAIAを辞め小泉循環農場で野菜の作り方を学びながらのアルバイトをしていた際にあきらさんに出会う。
“2人が一緒になったら農業しかないよね”と2人で自給自足の農業生活を送るために移住先を探し始め、茨城県の八郷盆地に出会い農業を開始した。
移住の心得
「元々は小泉循環農場のある千葉県で土地を探していたが、条件と合う場所が見つからなかったので、毎週末車で関東近郊を廻っていた時にたまたまこの八郷地域を通った時に『こんなところがあるんだ!?』とその景色に感動したの。その景色が忘れられなくて、結局ツテも知り合いもいない八郷地域に移住を決めた」
と当時の感動を語るお二人。
その後は「家を探している、畑を探している」と色々なところで話をし、チラシを作り配っていたと。そこから細い線を辿るようにして、空き家や畑を見つけていった。
「全ては人づたいのご縁だったよ」
と語るあきらさん。
「どの地域に住みたいか選べるものではないから、とりあえず気になる場所に行って関わってみる。地域に入り込んでみる。コミュニティに入り『自分がこういうことをやりたい、何か探している』というのを声に出してみるのが大事。そうすると結果、全てが繋がってくる。自分ができることを『ちゃんとやっていれば』誰かが見てくれているから。
野生動物は常に『何かを察して』毎日行動しているけど、人間だけが頭で考えて動いている。毎日の選択も頭ではなく、感覚で選べるようにしていくと、最終的に行き着くところは『自分が本当に力を発揮できる場所』となるから。
自分達は今その最終地にたどり着いたので、自分のエネルギーを全て地球に帰していきたい」
最終地に辿り着いたと語るお二人。
農家生活の実際は?
「憧れの農家生活は去年までの作業日誌を見ながら計画を立てるが、全てはお天道様次第。つまり、天気と野菜の出来次第。自分達が『こうしよう』と言っても、コントロールができないので『自然と共に生きる』っていう言葉が一番しっくりいくね。
自分がどれだけ頑張って育てても台風で全てダメになることもある。それでも生き残るために、色々なことをやっておく。うまくいけばありがたい。ダメだったらまた来年頑張ればいい。しょーがない。
もしかしたら、今の気候で今後農業をやるのは厳しいかもしれないけど、自給自足レベルであれば可能だよ」
天候の変化や環境の変化もあるが、原発事故などの問題もある。
「これらを防ぐ手立てはないけれど、それでも自分が影響を受けない状況・精神は手に入れることができる。理想だと思っているのは『世界中の人たちが、のほほんとその地域にあった生活をしていること』あとは、『自分がしたくないことはしない』のも大事」
読者へのアドバイス
「自分の感覚を大事にすることが一番大事かと。あとは、一つの場所で息苦しかったら別の場所を探してみてと言いたい」と史さん。
「自分がやってきたことに無駄なことは一つもないので、今目の前にある事を一生懸命にやることが大事。あと、過去の自分に対して感謝すること。過去の自分に対して『あなたの選択は正しかった』と今の自分から感謝を送っていたら、未来の自分から今の自分にメッセージがきて『どう生きるか』のヒントをもらえるかもしれないよ。ネットで自分の生き方を検索してもダメ。しっかり悩みに悩んで自分の足で確かめて!」とあきらさん。
現在、お二人の野菜BOXは口コミのみで広まっている。ウェブサイトも無ければ、大きく宣伝もしない。
「2人だけで畑を管理しているから、数に限りがある。たまにお茶の水GAIAで店頭販売したりしているけれど、それ以外は個人配達のみ。『いいものを作っていれば、ちゃんとお客さんが来るから』という小泉さんの言葉通り、自分たちで対応できるちょうどいいお客さんが来てくれているの」
この記事を読んで ベジタリアンフレンドリーきまた に興味を持ってくださった方は、「GAIAお店ネット」からお二人の連絡先を検索してみてください。
お二人の畑を実際に訪れたインタビュー動画はこちらから👇
インタビュー全編はこちらのPodcastからどうぞ👇